名前呼んで




「ほっぺ先輩〜。」
ほっぺ先輩こと鹿目筒良、十二支高校の3年生。
「その呼び方嫌なのだ。」
ほっぺ先輩はむくれてこっちを見る。
「んー、不服ですかー?じゃあつつらん?」
「それも嫌なのだ。」
「先輩ー、我が侭ですよー。じゃあなんて呼べばいいんですか?」
「普通でいいのだ。」
「じゃあ、ほっぺ先輩!」
「なんでそれなのだ。だいたいなんでそんな呼び方するのだ??」
相変わらず、ふくれたままで聞いてくる。
「だって、猿野がー……。」
私がそこまで言うと、ほっぺ先輩は悟ったように地団駄を踏んだ。
「猿野の奴、覚えてろなのだ!!」
その様子があまりにも可愛かったのでつい私は笑ってしまった。
「先輩、可愛すぎっ!」
あっ、しまった、地雷を踏んだかも……。
剃刀カーブとか投げられたらどうしよう。
「僕は3年なのだ。一年のに『可愛い』だなんて言われたくないのだ。」
嗚呼、ほっぺ先輩のピンクのぽっぺが真っ赤に……。
「もういいのだ!!」
怒ったまま立ち去ろうとするほっぺ先輩を急いで引き留めた。
「待ってください、鹿目先輩。」
「……それでいいのだ。」
ちゃんとした呼び方をした私に、先輩は満足そうに言った。
可愛すぎます、先輩!!
「ところで何の用なのだ?」
あっ、そういえばそうだった。
すっかり忘れていましたYO!(虎鉄先輩風)
「えっとですね、鹿目先輩はどうしていつもマフラーをつけているんですか?」
先輩のマフラーを指さして言う。
「これは僕のポリシーなのだ」
自信満々に言う、先輩。
「いつも同じのなんですか?」
「違うのだ、同じのをたくさん持っているのだ。」
ローテーションッスか!?
「もしかしなくても、全部同じ色ですか?」
「勿論なのだ〜。全部手作りなのだ。」
ええ〜!と驚いて、あわてて先輩のマフラーを手に取る。
「苦しいのだ〜〜」
思わず引っ張りすぎたマフラーを少し戻して改めて見る。
本当に手作りかっ!?って思うくらいすばらしい出来だった。
パサッ……。
驚きのあまり、持っていた紙袋を落としてしまった。
「それはなんなのだ?」
「なんでもないですっ!」
焦って拾ったのがまずかったのか 先輩はますます聞いてくる。
「ちょっと貸すのだ。」
そういって紙袋を無理矢理奪われた。
しかも勝手に中身見てるし。
「マフラーなのだ?」
紙袋の中身である深緑のマフラーをつかみながら先輩は言う。
ハイ、ソノ通リデス。
「下の方に未だ何かあるのだ。」
カサカサと袋の中から取り出したのは「ほっぺ先輩へ」と書かれたカードだった。
「僕宛……なのだ?」
なのだ?って聞かないでくださいよ。
「いや、あの、そのつもりだったんですけど……やっぱりいいです!」
思わず恥ずかしくなって先輩からマフラーを奪い取ろうとするけど、いっこうにマフラーは私の手元にこない。
「僕宛ならば、これは僕の物なのだ。」
「だって、鹿目先輩の方が上手だし、私のなんて下手だし」
「とにかくこれは僕の物なのだ」
そういうと先輩は巻いていたマフラーをはずして私の編んだマフラーを巻いた。
しっかし、情けないほど下手だな自分。
「下手なのだ(クスクス」
って、ひどいですよ先輩。
だから取り戻そうとしてたのに〜。
「……今度教えてやるのだ。」
そういって、真っ赤になりながら先輩は手を差し出した。
「部活にいくのだ……。」
「はい!」

……。」
「はい?」
「呼び方のことなのだが、筒良って呼ぶのだ。」
先輩、耳まで真っ赤ですよ。
「筒良先輩ですか?」
「……先輩はいらないのだ」
「分かりました、私のことも名前でいいですよ〜」
「わ、分かったのだ……
嗚呼、ごめんなさい筒良。
当分頭の中ではほっぺ先輩って呼んじゃいそうです。


因みに部活では。
「猿野許さないのだー!」
「ギャー……ゴフッ」
ほっぺ先輩が猿野に剃刀カーブをお見舞いしていました。

 END

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