教科書と
君
「くん、くん。ーくん!!」
ああ、うざいったりゃありゃしない。
さっきから、やたらと人の名前を呼びまくっているのは十二支高校3年牛尾御門(変態)。
えっ、変態はひどいって?
だって本当のことだもの。
初めてあったその日から追い回されてる私の身にもなって欲しいわよ。
「おーい、くん?」
「ぎゃあぁぁぁっぁ!!」
気づいたら目の前に牛尾がいた。
「ひどいなあ、そんな声出して」
そういうと牛尾は笑顔で私の手を取った。
「離せ、変態。」
急いで手を離してもらおうとする私に真剣な顔で牛尾は言った。
「くん、古典の教科書を貸してくれないかい?」
「はっ?」
「だから、教科書だよ。忘れてしまってね、困ってたんだ」
笑顔で言われても全然困っているようには見えないよ?
「知るか、蛇神にでも貸してもらえば?」
「蛇神君ー、うーん。彼は『修行也』って言って貸してくれないんだよ」
困ったね。と牛尾は言った。
だから、あんた本当に困ってるの!?
「頼むよ、くん。」
うー、本当は貸したくない。
貸したくないけど、牛尾のことだから貸すまで手を離してはくれないだろうし。
それはもっと嫌。
かなり、嫌。
「わーったわよ、だから手を離しなさい」
「そうかい、助かったよ。」
私が古典の教科書を机から出して、手渡すと。
「昼に返しに来るよv」
だから、お昼一緒に食べようねvと言いながら牛尾は去っていった。
誰が、一緒に食べるか。
速攻逃げてやる。
昼休み。
逃げられませんでした。
強制的に屋上につれてこられました。
ええ、忘れてましたとも。
牛尾が野球部キャプテンでユーティリティープレイヤーだってことを。
だって、普段はどう見たってただの変態。
「くんと二人でお昼を食べられるなんて嬉しいよ。明日も一緒に食べようねv」
「嫌よ」
誰があんたなんかと。
「嫌よ嫌よも好きのうちだね」
「ちがうわい、馬鹿」
どうやったら、こいつはわかってくれるんですか?
誰か教えてください。
「馬鹿?この間のテストくんのほうが下だったよね」
そして、この嫌みな口調。
嗚呼、本当に何とかしてください。
「うるさいわよ。それよりも教科書返しなさいよ」
全く、さっさと返してよね。
「ああ、これだね」
ちょっとまて、あんた今何処から教科書を出した!?(注:懐からです)
「助かったよ」
そういって牛尾は私に教科書を渡した。
なんか、これ心なしか暖かいんですけど。
うわー、最悪。
「あーあー、其れは良かったね……ってなによこれ!!」
返された教科書にはでかでかと名前が書かれてあった、赤のマジックペンで。
……イジメか?
「くんが名前を書いてなかったからね、僕が変わりに書いておいたよ」
にこりと笑う牛尾。
「ありがと〜、なんて言うかボケ!いつから私の名字は変わったのよ!?」
でかでかと赤でかかれていたのは、牛尾と言う文字。
いつから私は牛尾になったんですかねぇ。
「僕とくんが初めてあった日からだよ」
きらりと眩しそうな笑顔で答える変態。
「んなわけないでしょーが、変態」
どうしてくれるのさ、この教科書。
不幸中の幸いなのは、名前が書かれてるのが教科書の裏面って事だけ。
「さてと、もう昼休みが終わってしまうね。教室に戻ろうか」
何事もなかったかのように私の荷物を片づけ手を引いて立ち上がる牛尾。
……もう、なんとでもしてください。
二度とこの男にものは貸すまいと誓った日でした。
おまけ
「牛尾、これ返す也(古典の教科書を差し出す)」
「ああ、蛇神君(笑顔で受け取る)役に立ったかい?」
「役に立つも何も、主が無理矢理貸し付けた也(必要もないのに)」
「これも僕とくんの愛のためだよ」
「(、不憫也)」
END
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