初対面



「俺は蹴りたいから、蹴った」
そうにやにやと薄気味悪い笑みを浮かべた野郎ども。
その足の先には倒れている少年。
どうやら蹴られたらしい。
「サッカー部だってな」
へっと笑う馬鹿ども。
「足折ったらどうなるかな!」
そういって、少年の足に向かって自らの足を振り下ろした。

「まだまだだね」
そうぽつりと呟いたお決まりの台詞に、弟はもう一回と言った。
結局、あの後もう一勝負させられた。
止まっていけという親父と弟を何とか説き伏せて、帰り道を急いだ。
その途中に騒がしい、ゲーセンの前を通ったらもめてた。
何となく、気になったからのぞいたらこの始末。
とりあえず、少年の足は無事だったから良いものの頭にきた。
「動かないでよねっ!」
一応、金髪の人に向かってそういった後、ポケットに入ってたテニスボールあげて、ラケットを振り落とした。
馬鹿どもの顔に向けて。
「うおっ!」
妙な声を出して、倒れた馬鹿一人。
さっき少年の足をおろそうとした奴。
いい気味だよね?
「まだまだだね」
本日二回目の決め台詞を言ってにやりと笑ってやった。
そしたら、ボールが飛んでくることを見越してよけてた金髪の人と目があった。
にこりと笑いかけてきた。
だから、僕も唇の端をつり上げて、ポケットから二球目のボールを取り出す。

「いくで、ポチ」
パトカーのサイレンの音にいち早く反応した金髪の人が少年の襟首をつかんだ。
後ろに学ランの男の子が不安げについて行く。
「兄さんも行くで」
そう、金髪の人に声をかけられ、これ以上此処にいても仕方がないのでついて行くことにした。
少し行ったところで僕たちは止まった。
「まったく、誰やねん。パトカー呼んだ奴」
金髪の人が一人ごちた。
「わるいな、俺だ」
そういって出てきたのは、タレ目の人。
三上先輩とどちらがタレ目だろう?
同じくらいかなぁ?
んーー?
「おいっ、おい」
気がつけば、金髪の人が俺に話しかけてた。
「……何?」
少し焦った結果出てきたのは弟のようなぶっきらぼうな返事。
「あの、助けてくれてありがとうございました!」
そういってぺこりと頭を下げた少年に学ランの男の子も続けて例の言葉を述べる。
「べつに、助けた訳じゃない。ただ、むかついただけ」
サッカー選手にとってどれだけ足が大切か分かってない馬鹿どもが。
「だから、礼言われるようなことしてない」
これは本当。
普段なら、見知らぬ奴を助けたりなんてしない。
まぁ、見知らぬ奴じゃないんだけどさ。
「気に入ったで、兄さん。名前はなんていうん?」
金髪の人が、自己紹介しながら僕に話しかけてくる。
おおかた、この人は僕が先ほどの会話を聞いていないことも気がついているのだろう。
くえない奴。

?名字はなんていうん?」
そう聞いてくる金髪の人ににやりと笑って、帽子を深くかぶりなおした。
。今はそれしか教えない。どうせまた会えるし」
一息ついて、それと、と目線を少年に合わせる。
「僕、アンタの事知ってるよ。だから、また会うよ、風祭先輩」
そうやって笑えば、風祭先輩は驚いたように、えっ と呟いた。
「じゃあ、ね」
僕はそういって、歩き出した。
寮へ戻るために。

アンタのこと知ってるよ。
だって、補欠と呼ばれる3軍で誰よりも頑張ってただろ?
いつも、フィールドの中見てただろ?
いつの間にか、アンタはいなくなってたけど。
今日見て安心した。
サッカー続けてたんだね。
ねぇ、また会えるから。
そのときに、ちゃんと名乗るよ。
アンタが僕の名前を知ってるかはわかんないけどね。
ねぇ、今度会ったときは。
サッカーしようよ。

END


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