最近、部活の所為なのかいつもよりも疲れてて。
跡部とか忍足とかに駄目だって言われたけど、ついつい公園のベンチで寝ちゃったんだよね。
それからどれくらいたったんだろう?
ふと誰かの気配がして、瞼の裏の闇が濃くなった。
誰?
「ねぇ、こんなところで寝てると風邪引くよ?」
声と共に体にかすかな振動。
駄目だよ、こんな振動じゃ起きないCー。
忍足なんて鞄で叩くし、跡部ならほっておくのに。
「ねぇってば」
先ほどよりも、少しだけ焦った声色になったその人はそれでもなお優しく揺さぶり続ける。
あー、寝そう。
「ちょっと!……困ったなぁ」
揺さぶる手が止まった。
困ってるのかなー?
眠いけど、頑張って起きた。
ねぇ、君は誰?
俺は──。

「俺は……ジロー」
たまたま、通った公園で寝てる人を見かけた。
普通ならほおっておくんだけど、その人の側にテニスバックを見つけたので近づいた。
ふわふわの金色の髪に、見たことのある制服。
近くに学校があるんだろうか?
他校にさして興味のない僕にはわからないけれど。
「ねぇ、こんなところで寝てると風邪引くよ?」
とりあえず、声をかけて揺すってみた。
さすがにこのまま寝たら風邪引いちゃうよ。
不用心だし。
「ねぇってば」
困った、全く起きてくれない。
「ちょっと!……困ったなぁ」
ああ、もう。
くしゃりと自分の髪の毛をかき上げる。
このまま放ってもおけない。
どうすればいい?
「俺は……ジロー」
眠ってる人がうっすらと目を開けて開口一番にそう言った。


「あのねー、俺ジローっていうの」
「……うん」
目をこすりながらも必死に言葉を紡ぐ。
未だ眠いんだろうか、そのしぐさは思わず小動物を連想させる。
もしくは、弟の寝起き。
「ジローって呼んで?」
「……うん」
ジローとしか教えて貰ってないのに、他にどう呼べば良いんだろうかと思ったが
敢えて口にはせずに肯定の返事を返した。
「名前はなんて言うの?」
だよ、ジロー」
?」
嬉しそうに僕の名前を確かめるように言う。
「ねぇ、ジローは何でこんなところで寝てたの?」
先ほどからずっと気になっていたことを聞いてみた。
「あー!やっべぇ、早く帰らないと!!」
そう言いながらあわてて起きあがり荷物をひっつかむ。
「またねー、!!」
ぶんぶんと手を振りながら走り去っていった。
「……僕も帰らなきゃ」
空はすでに紺色のグラデーションがかかっていた。

END


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