で隠した涙



前々から知ってたその子は、始めの印象なんか吹っ飛ぶくらい目を惹かれた。
雨で隠すように泣いてるその子は僕に気づかない。

初めはむしろ嫌いなタイプだったんだ。
だって、学校で会うような人と同じ。
僕を武蔵野森のレギュラーとしてしか見てない人達と同じ。
そう思った。
リョマもそうだと思うから、へんなの?っておもったけど。
その隣に桜乃ちゃんがいたから納得した。
桜乃ちゃんがいればある程度のオプションは良いらしい。
現金な奴。
その子がリョマを好きなことも、リョマと桜乃ちゃんが思い合っていることも。
第三者の僕からは痛いほど分かった。
それでもなお、僕には関係がないと思った。
そう思っていたのになぁ。
このままこうしているわけにもいかない僕はその子に声をかけた。

「……リョーマ、様?」
リョマと僕を勘違いしておびえるその子の態度で悟った。
おおかた、リョーマと桜乃ちゃんがつきあい始めでもしたんだろうと。
「僕はリョマじゃないよ」
そう言って笑うと、その子は少しだけほっとしたようだった。
「とにかく、このまま濡れておく訳にはいかないからついておいでよ。
……寮だけど」
ついてこいといったときに、一瞬瞳が揺れた気がして、寮だと言った。
反応がなかったので、悪いかなとは思ったけれどこのままここで雨に濡れているわけにもいかないので
手を引っ張って歩いた。
その子はひたすらうつむいて引っ張られるままに歩いてる。

目指すは寮。



END


top

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送