涙を止めたくて


寮に着くと、寮母さんに事情を説明した。
このままだと風邪をひいてしまうので寮母さんが浴場に連れて行った。
それを見送った後、美紀先輩に電話をした。
「あっ、もしもし美紀先輩?」
何回かコールの後、美紀先輩は出た。
電話のバックが騒がしいから外に居るんだろう。
「もしもし、君?」
美紀先輩が僕の名前を行った途端、だって!?という声が聞こえた。
たぶん、いや間違いなく三上先輩の声だ。
「もしかしなくても三上先輩と一緒?」
「うん、買い出しなの。
で、どうかしたの?」
そういえば、先輩朝から出かけてたっけ。
「実はお願いがあるんっスけど……」


「すいません、渋沢先輩」
「いや、いいんだが」
寮に女の子が来たと言うことで騒がしかったサッカー部員を静めてくれたのは自室で本を読んでいた渋沢先輩だった。
一番騒ぎそうな藤代先輩は居ない。
「こっちも部屋に居て貰うようにいいました」
「ご苦労だったな、笠井」
「すいません、笠井先輩」
「気にしないで、
階段から下りてきたのは笠井先輩。
騒ぎを聞きつけた笠井先輩も、気を遣って静めてくれた。
ちろりと二人の視線を受けた僕はコクンと頷く。
「分かってます、説明します」
そう言って実家に宿泊中で一成の居ない僕と一成の部屋に足を進めた。

「なにから、話せばいいですか?」
二人の前にアイスティーを置き、自分の前にファンタを置いて座る。
「彼女は?」
初めに口を開いたのは渋沢先輩だった。
「彼女は小坂田朋香、青学の一年です」
「青学ってことは、弟の知り合いか?」
「……そうです。僕もリョマを介して一度、今回で彼女に会うのは二度目です」
「二回目に会った人間を寮に連れてくるなんて珍しいね」
そう言ったのは、笠井先輩。
たしかに、普通は連れてこない。
というより、女性禁制の寮にましてや生徒でもない彼女を連れてくるのは抵抗があった。
けれど、事情が事情だから家に連れて行くこともできなかった。
「珍しいって言うか、自分でも驚きッスよ」
「一体どうゆう風の吹き回しなの?」
「どういうって、一目惚れってやつッスかね」
「はぁ!?」
思わず大声になってしまう笠井先輩と、お茶を吹き出しそうになった渋沢先輩。
「……コホッ、どういう話の流れでそうなるんだ?」
「んー、簡単に言うとですね。
雨の中で泣いてる彼女から目が離せなかったんっスよ。
で、そのままにしてもおけないし家にも連れて行けないし寮に連れてきたんです」
「家に連れて行けないってどうして?
彼女は弟君とも知り合いなんだよね?」
「だからッスよ。
彼女はリョマを好きなんです」
「だったらなおさら、家の方が良かったんじゃないのか?」

「たとい、リョマが自分の親友と付き合いだしたとしてもですか?」

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