クラスメートはサッカー





「サッカー部に入った」
ある日唐突に、クラスメートがそんなことを言った。
今まで、サッカーのサの字も見あたらなかった奴がそんなことを言った。
(後で聞いたところ知らなかったらしい)
そして、何故か不破がサッカー部に入ったという事を皆知っていた。
なんでやねん!
ああ、つい同じ学年のSくんの口調になってしまったよ。

「何かあったの?」
「変な奴にあった」
変な奴?
不破に『変』っていわれるなんて、よっぽど……。
「そいつの笑顔を考察するのだ」
ほうほう、『考察するのだ』とか良いながら、楽しそうだよね。
「名前は?」
「風祭将だ」
「ん?」
風祭君って確か、武蔵野森からの転校生だったよね。
「知っているのか?」
「結構ね、噂になってた時期があるんだよ」
不破は知らないだろうけどね。
「俺は知らなかったが?」
やっぱり……。
「サッカー部を中心に、騒がれてたからじゃない?今まで興味なかったでしょう?」
そう私に、コクンと頷く不破。
「そういえば、ポジションは?何処やるの」
「GKだ」
ふーん、GKねぇ。
「今日から練習?」
「そうだ」
「……嬉しそうだね」
そういって、にって笑えば不破も目を細めて口元をゆるめる。


放課後、いつもよりちょっぴり、あくまで当社比(?)で
ちょっぴり嬉しそうな不破を見送って私も教室を出た。
目指すは、美術室。
この学校では原則、部活動に入らなければならない。
私が所属しているのは美術部。
美術部は、活動日も活動時間も決められていない。
来ようが来まいが、誰かに咎められはしない。
だから、美術室にいる人物なんて限られているし、幽霊部員が多い。
それを良くも悪くも思わない。
部長は、来たい奴だけこればいいって言ってた。
その部長は、何時も来てる。
「こんにちわ」
そういって、美術室のドアを開けると時間が早いせいか部長だけだった。
というか、部長は何時も一番にいる。
どんなにうちのクラスが早く終わろうともだ。
「おー、。今日はやっていくの?」
「ええ、今日はグランドでスケッチしにいこうかと」
「何々、めずらしーじゃん。何処で書くの」
「クラスメートがサッカー部に入ったらしいので、見学もかねて」
「ん?もしかして不破って奴?」
「そうですよー。知ってるんですか?」
「まぁ、噂でな。実際あったことはないから何ともいえないけど」
会ってもいない人の評価はつけられない。
これが、部長の信条らしい。
「まっ、とりあえずじゃまにならない程度に描いてこーい。
俺はどうせ最後までいるから」
部長の言葉に、はーいっと返事をしてスケッチブックと色鉛筆を持って部屋を出た。


グランドに出ると、すぐにサッカー部が目に入った。
一応、顧問の先生に許可をもらって比較的近く且つ安全な場所で腰掛けた。
スケッチブックを開いて、ひたすら前の映像を瞳に映す。
、来ていたのか?」
気がつけば、休憩中なのか不破が寄ってきていた。
(こう書くとなんだか嫌がってるみたいに思われそうだけど、そういうわけじゃない)
「うん、不破の初練習だしね」
思った以上に楽しそうでよかったよ。
不破はそうかと言って、急いでグランドに向かい風祭君を連れて戻ってきた。
「えっ、ちょ、不破君、なに??」
あー、何も言わず連れてきたからとまどってるよ風祭君。
、風祭だ」
そういって、風祭君を私の方へ突き出す。
多分、紹介してくれてるんだ。
「えっと、風祭将です」
混乱している状態でも自己紹介してくれる彼は本当にいい人だと思う。
そんなことを考えてたら思わず笑みがこぼれた。
、不破のクラスメートだよ」
よろしくというと、こちらこそと返してしくれた。
「風祭君を不破が気に入った理由が分かったよ」
私がそういうと、風祭君はえっと驚いた。
「なんのことだ?」
「嫌だなぁ、私が分からないとでも思ったんだ?
分かるよ、不破が風祭君の事気に入ってることぐらい」
くすくす笑いながらそういうと、風祭君が嬉しそうに笑った。
うわー、不破とは違って表情がわかりやすいくらい出る子だな。
不破は、他の人から見たら表情が分からないらしいし。

!?」
驚きの混じった声がした声がして、そっちの方を向けばいたのは去年のクラスメート。
水野竜也だった。
、知っているのか?」
不思議そうに、私と水野君を見まわす不破。
そして訳がわからなさそうな風祭君。
「んー、去年同じクラスだから、名前と顔ぐらいは知ってるよ〜」
話したことは一度たりとも無いけどね。
「悪いけど、見学は断ってるから」
ものすっごく機嫌悪そうに言われた。
うん、すっごく感じ悪いね。
まぁ、その原因作ったのは自分だけどさぁ。
「香取先生に許可は取ったよ?」
そう言って、先生の方へ視線を移す。
「何故、水野はそんなに機嫌が悪いのだ?」
水野君が(先生に)呆れていると、わからんといった様子で不破が口を挟んだ。
「私があー言う子みたいな応援すると困るからじゃない?」
そう言って、ここから少し離れたところにいる『キャー水野君!』等と叫んでいるお嬢さん方を指さす。
がああいうことをするのか?」
相変わらず、淡々と話すね。
「しない、水野君見に来た訳じゃないし」
そこまで言うと、不破が考え出した。
「どうしたの不破君?」
そんな不破に問いかける風祭君。
は先ほど俺の初練習だから見に来たと言ったな?」
「言ったね」
「なら、あそこの女子のように『キャー不破君!』とか叫ぶのか?」
……。
「くっ……」
「ぷっ……」
「あははははっ!!」
風祭君は笑っちゃいけないと思いつつも声が出る。
水野君は肩が震えてる。
ちなみに、私は大爆笑。
だって『キャー不破君!』の部分だけ、妙に高い声で棒読みなんだもん。
「何、何、不破言って欲しいの?」
言って欲しいなら言ってあげるよ?
くすくすと笑いながら言うと、不破は少し考えて いい と言った。
おおかた想像でもしてたんだろうね。
「まぁ、あんな応援してるぐらいなら手を動かすから安心してよ」
そう言うと、風祭君が手?って聞いてきたので膝に乗せてたスケッチブックを手にとって
良かったら見る?と聞いてみる。
すぐに肯定の返事が返ってきたのでスケッチブックを手渡した。
それをぱらぱらとめくっていく。
さりげなく水野君も見てる。
その後風祭君がものすっごく素敵な笑顔でこっちを見てきた。
あー、これが不破がサッカー部に入るきっかけかぁ。
わかる気がするな。
「すごいです!」
きらきらきら〜って光っているように見えるほどまぶしい笑顔で言われた。
まぶしすぎる……。
「ちょっと、水野・風祭・不破!そろそろ休憩終わるわよ何して……!」
少し大きな声を出しながらやってきたのは長い髪の女の子。
「あなた、この間の……?」
怪訝そうに見つめる彼女に私は立ち上がって言った。

「はじめまして、小島有希さん?」



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