順風満帆にはだほど遠い



天城君がドイツへ旅立って、少し寂しいけれどでも向こうでもサッカー頑張ってくれてるかな?なんてふとした時に考えてる自分がいる。
といっても、メールの交換はしてたりする。
ドイツへ行く前にアドレスの交換をした。
この前は、義妹さんと一緒に撮った画像を添付してくれたので、こちらからは不破と一緒にパフェを食べているところを送ったところ、うけたみたいだった。
よくはわからないが、そのとき一緒に行った王子と風祭君も笑ってたなー?
メールってのは少し物足りない時もあるけど、きっともうすぐ会えるはずだからそんなに寂しがることもないかな。

都選抜の方は、特に何も変わりがない!
と、言いたいところだけどそうも言ってられないのが痛いところ。
よりにもよって、それが10番を背負っている人間なんだからなおさら。
きっかけは、都選抜対洛葉戦から。
本人が悩み出したきっかけは一応そこからなんだけど、本当は選抜合宿ぐらいから芽は出てたんだ。
でも、洛葉戦の時にはっきりとした形で西園寺さんが問題をぶつけたんだ。
それ以来ずっと、考えてるみたい。
まぁ、焦ってしまう気持ちはわからなくはないけどね。
風祭君は人を惹きつけてしまうし、サッカーだって急に伸びてきてるし。
なんていうか、何処までも貪欲で、自分がサッカー下手だと思ってるから何処までもがむしゃらに練習してるだけなんだろうけど。
それが結果として出てるだけなんだけど、やっぱり一緒にプレイしてる方としては焦るんだろうな。
一時期、シゲも同じようなこと考えてたみたいだし。
まぁ、シゲの場合良い方に解決してくれたけど、王子の場合はなー。
王子メンタル弱いんだよね、やっぱり。

「悩んでるねー、王子」
そう言って、一人黙々と昼ご飯を食べている王子の隣に腰掛ける。
いつもなら此処で『王子って言うな!』ってつっこんで来るのに、それすらしないって事はよっぽどか。
「悩むのは悪いとは思わないけどね、どうせ王子のことだから誰にも相談とかしてないんでしょ?」
私が少しおちゃらけていうと、王子がぐっとつまった。
図星か。
「あっ、相談するならシゲは止めといた方が良いよー」
シゲはシゲで今忙しいからね。
それに、あまりにシゲに頼りすぎても、今後また悩むことになりかねない。
一番妥当なのは、小島さんだろうけど……。
「王子はさ、彼女に相談とかしたりしないでしょ?」
あっ、ちょっと、郭君口調になってしまったと思いつつも紡いだ言葉に、王子は思いっきりむせた。
顔を赤くして。
「……出来るかよ、そんなかっこ悪いこと」
呟くようにぽつりとこぼした言葉を私の耳はひろった。
「そんなこと言ってる水野君の方がかっこ悪いよ」
先ほどまでのおちゃらけた雰囲気を払拭した私の物言いに、王子ははっとした表情になる。
そしてうつむいた。
「有希は、王子が何かに悩んで悩んでることちゃんと気がついてるよ。
一度話だけでもしてみたら?
人に話してみるだけでも、少しはましになるはずだから」
にっと笑ってみせるけど、相も変わらず王子は暗い表情のまま。
どうしようか。
「私はさー、王子が何に悩んでるのかも、その答えも知ってる。
けど、私からは教えられない」
そういうと、王子はちいさくわかってると答えた。
「答えは自分で出さなきゃいけない、どんなに時間がかかってもね」
それはわかっているんでしょう?と尋ねればこくんと頷かれた。
「だから、焦らなくても良いと思うよ。
焦らなくても、ちゃんと答えは出るから」
そうはいっても焦ってしまうだろうけど。



END

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