葉戦




「松下コーチ」
ベンチに戻りコーチに声をかければ何だと答えが帰ってきた。
「佐藤君、引きずってでも医者に連れて行ってくださいね」
一人だと絶対行きませんよ、アレっと言えば、コーチはふっと笑った。
「ああ、わかってる」
なら、平気だね〜。
「では、お疲れ様でした」
ぺこりと、お辞儀して不破に先に帰るように行った後、飛葉中サイドに行った。
先ほど目があった飛葉中の監督にお辞儀をしてタオルをかぶってる椎名さんに近づく。
「……なんか用な訳?」
椎名さんの前にしゃがみ込んで見上げている私に椎名さんはそう言った。
すこし、涙声だ。
「お疲れ様でした」
「なに、それ嫌みのつもり?
自分のところが勝ったからって」
「ちがいます。
私はどちらの応援でもないですよ、元々上水のマネでもないですし」
私が応援してるのは不破ぐらいだし。
「じゃあ、なんでここにいるわけ?」
「……分かってるとは思いますが、本戦が未だ残ってますよ。
世界一になるのでしょう?」
少し挑戦的に言ってみる。
「それとも、たかだか一回負けたぐらいで終わるようなチームなんですかここは?」
「……試合終了後にいちゃついてる奴に言われたくないね!」
バシッとタオルを取った椎名さんはいつもの不敵に笑っている彼だった。
「いちゃついてなんか、無いんですけどね〜」
向こうが一方的に抱きついてきたんですけどね。
「どう見たっていちゃついてただろ!?」
うんうん、いつもの調子に戻ったな。
「改めてお疲れ様でした」
「ああ、さんきゅ」
改めてそう言えば、ぷいっと目線を外しながらそう言われた。
照れてる。
とりあえず、もう平気そうな椎名さんを置いてやっと泣きやんだらしい井上さんの方へ言った。
「井上さん」
「どないしたん、ちゃん?」
「落ち着いて聞いてくださいね」
「ん?なんや」
「……佐藤君、もしかしたらサッカー止めるかもしれません」
「なんやて!?」
井上さんは手に持っていたタオルを落とし、私の肩をつかんだ。
「静かに!」
「ああ、スマン。
けど、ほんまに?
なんでや?」
「はっきりとは分かりません、でももしかしたら止めてしまうかもしれません」
けど、私は止めないだろう。
佐藤君がどう選択しようと。
私には、止める事なんてできない。
私には。


END

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