都選抜合宿
9
やっと洗濯が終わり、夕食を食べようかと思って食堂に入れば騒がしかった。
「何事?」
不破の横へ座り、そう聞けば事情を説明してくれた。
「ヘタクソねぇ」
なるほど、そんなことがあったのか。
「其れは禁句だよね」
始めは誰だってヘタクソだ。
それぐらい理解しているだろうに。
私の言葉に斜め前の席にいた藤代君が大きく頷いた。
「あれはキツイよー」
藤代の言葉に私と克ちゃんが頷く。
ちなみに王子はオロオロしてる。
……ヘタレめ。
でも、この場合は。
「風祭君も悪いよね」
そういって、不破から渡されたジュースに口を付ける。
どうやら、不破は私の分の食事もトレイにとって来てくれていたようだった。
「えー、なんてだよちゃん」
藤代君の声と複数の視線。
なんで、他のテーブルの人までこっちの話聞いてるんだろう。
「だって、食事中にボールなんてマナー以前の問題じゃない?」
そう答えた後小さくいただきますと手を合わせる。
其れを見た後不破も同じ動作をする。
待っていてくれたのか。
「あーうん、たしかに」
そうかも、と納得してくれる藤代君。
興味がそがれたかのように他の視線もなくなる。
「まぁ、どっちもどっちね。
水野君気になるなら行ってこれば?」
そう目線を合わせていえば、嗚呼と慌てて席を立った。
素直なんだか、そうじゃないんだか。
「そう言えば、克ちゃん」
口の中のものを飲み込んで名前を呼べば、ん?と返事が返ってきた。
「お母さんが会いたがってたよ」
「おばさんが?」
「うん、克ちゃんの料理が恋しいってさ」
克ちゃんが寮に入ってからそうそう会えてないもんね。
「そうか、じゃあこんどお邪魔するって伝えておいてくれ」
「克ちゃんならいつでも歓迎ー」
たぶん、お母さんが帰してくれないと思うけど許してね。
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