都選合宿
10


「コレお願いね?」
にっこりと渡されたのは、Bグループのデータ。
今日計った記録のデータをパソコンに打ち込む。
さりげなく、評価だとか書いてるんだけどこれは良いんだろうか。
Bの分だけって事はAのはどうしたのか。
其処まで考えてから、頭を振る。
玲さんに聞きにいって、Aの分を渡されても面倒だ。
正直、この量だってハンパ無い。
「今日中に終わると良いなぁ」
ほーんと、来るんじゃなかったこの合宿。

聞き慣れた着信音が聞こえ、通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『もしもし、か?』
「シゲ?どうしたの」
通話しながらも手は動かす。
手を動かしておかないと、本当に今日寝られなくなるからね。
『選抜合宿はどないや』
「まだ、始まったばかりだからね、何とも言えないよ」
『まぁ、せやろなぁ』
「そっちは?」
『……嗚呼、上手く行ったで』
少し声のトーンが低くなった。
「そっか、良かったね」
思わず、手の動きが止まる。
『でも、未だや。
未だ始まってもない』
「うん」
『絶対に受かって帰るから』
「うん」
『せやから、帰ったらただいまって言うてくれるか?』
「そんなの、いつだって言ってあげるけど?」
ばかだよね、シゲってば。
『……おおきにな』
「別にお礼を言われるような事じゃないと思うけど?」
そう告げれば、一拍おいた後の忍び笑い。
なんでそこで笑うのさ。
『そっちもきばりや』
「またね」
『嗚呼、おやすみ』
「おやすみ」
そう言ってぷつりと電話を切った。
机の上に置いたケータイをしばらく見つめた後、ほったらかしにしてた資料に手を伸ばす。
とにかく、コレを終わらしてしまわないと始まらない。


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