偵察とットサル



洛葉戦も終わり、次は国部二中かと思ってたところが違ったらしい。
飛葉中。
そういえば、この間たまたま見かけた試合は飛葉中ではなかっただろうか?

「俺と小島と、 とで偵察に行ってくる」
ほうほう、偵察ね。
いってらっしゃ〜い。
って。
「なんで、私が行くのさ!?」
聞いてないっていうか。
皆忘れてるのではないだろうか、私がサッカー部ではないことを。
「仕方ないだろう。の方が見る目あるんだから」
そう言いはなった水野君。
「で、でも、 さんもテスト勉強あるんじゃないの?」
フォローを入れてくれるのは風祭君。
「いや、しないけど?」
だって、授業聞いてれば平気だし。
「は?」
「帰って絵でも描こうかと思ってただけなんだけど」
せっかくフォローしてくれたのにごめんね。
「なら大丈夫だな?」
「いや、やっぱり駄目。今日は帰るよ」
じゃ!と行って逃げた。


放課後、そのまま帰るのも気が進まないので。
不破に先に帰ってもらって、フットサル場に来てた。
この間見つけたんだよね〜。
「けんかするならどっか行ってくんない?」
ん?なんか騒がしいな。
そう思って騒ぎの方に行ったのが間違ってた。
「あー!! !」
そこには王子と有希と風祭君と松下コーチっと。
「……天城君?」
確か、国部二中のFW。
「……あんた、この間の」
「天城君、 さんと知り合い?」
「この間の試合の時にちょっと話しただけだよ、風祭君」
私がそう言うと、何となく反論したそうな顔をした天城君だけれども何も返しては来なかった。
「あれ?あんたこの間の試合見に来てた?
来てたよね?なんかひたすらスケッチブックに書いてたよね?ねぇ、そうだよね?」
うわー、よくもまあこんなにぺらぺらと話せるもんだなー。
ん?この間の試合。
「え?そうだっけ」
思い出そうと思って記憶をたどっても当てになりそうにもなかったので
鞄からスケッチブックを取り出す。
ぱらぱらと、めくると先日見かけた試合のスケッチにたどりつく。
あった!
「4番の人だよね?
あと6番と7番と3番と2番だったよね?」
そう言うと、4番以外はコクンと頷いてくれた。
、お前試合見てたんなら教えろよ!」
五月蝿い、王子〜。
「見てたっていっても途中からだし、相手校飛葉中って知らなかったし。
それに、欲しがっているような情報は何も持ってないよ」
天城君が本調子じゃなかったから、はっきり言って一方的な試合だったしね。
「それでも言えよ!だったらこんな風に来なかったのに」
あーあー、もう私が悪いのかなぁ。
「……だいたいテスト期間って気づかない方が悪いんじゃん」
どうせ無駄足だったんでしょ。
ぼそりといった言葉は王子に聞こえてたらしく、 !と怒鳴られる。
「もう、良いでしょ〜。一応収穫はあったみたいだし」
「けど!……」
「言っとくけど、私のサッカー部の人間じゃないし、自分が助言したいと思わないとしないよ?」
「じゃあ、 はサッカー部が負けても良いって言うの?」
やっかいなことに、有希の怒りまで買いかけてるようだ。
「そう言う訳じゃないよ。そうだったら毎日サッカー部に顔出したり試合見に行ったりしないよ。
今回は本当に相手校知らなかっただけなんだけど」
「!そうだよな!悪い、
はっと気づいたように王子が言った。
「ねぇ、話ついたんなら試合しようよ」
4番が待ちくたびれたように言った。
「あっ、私見てて良いかな?」
描きたいんだけどというと4番が良いんじゃない?と言ってくれた。


試合が始まったのは良いけど、なんて言うか慣れてるのと慣れてないのでは大違いだな〜。
まぁ、こっちは経験者が有希だけだもんな。
あーあー、戸惑ってる。
あっという間に点入れられまくってるし。
「タイム!」
水野君がタイムを取った。
なんか言ってるのでおもしろそうなので私も近づく。
「サッカーと思うから駄目なんだ!」
わかったという風に嬉しそうに風祭君は言う。
「松下コーチ」
「ん?」
「GK、私に変わってもらえません?」
「「「「えっ!?」」」」
松下コーチ以外の声が重なる。
「そうか、助かるよ。どうも俺には向かないようでな」
ええ、見ててわかりましたよ。
渡されたグローブを受け取ってから、飛葉中の人たちの方に向かって言った。
「悪いけど、GK交代したいんだけど良いかな?」
「別に構わないけど、それで動けるの?」
それっていうのは制服の事。
まぁ、学校帰りに来たからそれは仕方ないんだけど。
「平気平気」
そういって手をひらひらさせる。
「風祭君」
「は、はい!」
「あまり、考えすぎちゃ駄目だよ。
フットサルを楽しめば良いんだよ」
ゴールは私が守るから。
私がそう言うと、ゴールに戻った。


こちらのチームが一点取って、さあ反撃はこれからという時に邪魔が入った。
その姿を見た途端、近くにいた金髪の人が『キューピー下山』と呟いた。
その後いっせいに、飛葉中のメンバーがフットサル場から出て行った。
松下コーチが何やらキューピーと話しているようだったけれど、そんな内容には全く興味ない。
「天城君」
こそこそと小声で、天城君の服を気づいてもらえる程度にひっぱる。
案の定天城君は気づいてくれて、小さく何だ?と聞いてくる。
ちゃんと、私の声のトーンにあわせてくれる。
「楽しかった?」
「えっ……?」
「楽しそうだったよ、天城君」
「……でも、もう」
「天城君が楽しいって。天城君が楽しいと思う事をした方が、かずえさんも喜んでくれると思うよ」
そういって、私は先に帰るねっと言って静かに立ち去った。
あれ以上いても意味がないので、家にでも帰ろう。

「あれ?あんたさっきの?」
帰ろうと帰り道をとぼとぼ歩いてた私の前にやってきたのは先ほどの飛葉中の5人。
「あー、4番さん」
私がそう言うと、4番さんが嫌な顔をした。
「あのさぁ、その4番さんってのはなんなわけ?」
「や、だって名前知らないし」
そう言うと納得してもらえたのかどうかはわからないけど一人づつ名前を言ってくれた。
「椎名翼、飛葉中3年ね」
「黒川柾輝、2年」
「井上直樹や、3年な」
「畑五助、3年」
「畑六助2年」
椎名さん、黒川さん、井上さんに、畑さんに畑君。
うーん、最後のがややこしい。
「で、あんたは何者な訳?」
この間同じ様な台詞を桐原監督にも言われたな〜。
「桜上水2年 、ただのしがない美術部員」




END

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