出来るのは言だけ


あのあと、有希に何で『サッカーが出来る』ということを隠してたんだと、
怒気を含んだ声で言われた。
聞かれてないから、って私が言ったらもっと怒られた。
はっきり言って、怖かった。
因みに、風祭君には尊敬のまなざしで見られた。
何故だろう?

それでも、なお不破と野呂君の問題は解決しなかった。
「どうする?このままじゃ不味いわ」
有希の声が屋上で響いた。
明日の試合に備えて、サッカー部の数人が屋上で作戦会議中(?)
何で私までいるんだろう?と思いながら、いつもの通り不破の隣に腰掛ける。
「ほっといたらええねん」
そう声がしたと思ったら視線がこちらに集まったので、私じゃないと上を指さす。
どうやら、隣で不破も同じ事してたらしく、佐藤君に少し笑われた。
「ほんまに勝ちたかったらまとまるはずや」
佐藤君がそういったあと、何故か不破が口を開いた。
私の方を向いて。
「どうにかならないか? 
不破の言葉に皆の視線が集まる。
というか、何故私に振る?
「どうすればよいか、ならばわかっているのだろう」
何で断定なんだろう。
普通こういう時は、疑問系で聞くのではないのだろうか?
「本当か?
不破の言葉を受けて、水野君がすがるように見てくる。
風祭君も拾われた子犬のように見てくる。
はぁ〜。
「わかるかわからないかって言われれば、わかるよ。
ただ、私は不破じゃないし野呂君でもないから100%は無理だし、
そこまでわかろうとも思わない」
100%わかるなら、言葉なんてものも、文字なんてのも必要ないはずだ。
「でも、解決策ぐらいは思いつくよ。
けどね、言わない」
「……何故だ」
「自分で解決しなきゃいけないから。
私が答えを教えるのは簡単だけど、それじゃあ一時の解決にしかならないってわかってるし」
だから、言わない と。
「っ───」
「腹減ったろ?飯食いに行くぞ。も」
何か言おうとした水野君の声は突然入ってきた松下コーチの声に遮られた。
タイミング良いなぁ。
何かを言い足そうに皆がこちらを見ているのがわかる。
そうでないのはコーチと佐藤君と、不破だけだった。
それでも、コーチの声には逆らえないのか皆屋上を後にする。
残された私と不破。

「いくぞ」
そう、何時も通りに出された不破の手を取った。
「不破」
名前を呼べば何だ?といわんばかりにこちらに顔を向ける。
「私はどうでも良いから、答えを言わないんじゃないよ」
「わかってる」
「私は当事者じゃないから、答えは出せない。
出せるとしたら助言だけ」
「ああ」
「だから一つだけ。
不破は自分の思うように進めばいいよ」
それだけ。



END

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