少年がになった後

2




<郭SIDE>
まだ、フィールドでプレイしてるみたいに感じる。
ついさっきまで、試合をしてた。
その興奮は未だ心の奥に残ってる。

「でもさー、ちゃんって意外と冷たいんだなー」
結人がベットに寝ころびながら言う。
「風祭と同じ学校なんだろ?
俺水野達と一緒に行くと思った」
一馬が枕を抱きながら言う。

『榊さん、ご指示を』
そう彼女が言った後榊さんは、俺たちに部屋に待機しておくように言い。
「君は、君はやはり病院に行った方が良いんじゃないか?」
その場を去ろうとしているさんに榊さんは言った。
友人なんだろう?という意味が見ていてすぐとれた。
しかし、さんの答えはいいえだった。
「しなければならない仕事がありますので」
そう言った後、渋沢に一言二言話して宿舎へ入っていった。

「俺もー、だって俺だったら絶対病院に行くもん。
頼まれた仕事なんかよりダチを取るよな普通」
「俺も、たとい何も出来なくても側にいたい」
「ちょっと、ちゃん見損なったよ〜」
はぁ〜っとため息をつく結人に、枕をぎゅっと握りしめる一馬。
「結人、一馬、それ以上言うなら俺も黙ってないよ?」
自分の口から発せられた言葉は思った以上に低い声だった。
俺の声に結人と一馬の肩がビクリと動くのが見えた。
「なっ何怒ってんだよ英士」
結人がひるまずに言ってきた。
一馬がコクコク頷いてきた所を見ると、どっちも意味がわかってないみたいだね。
さんは、冷たいんじゃなくてむしろ、優しいんだよ」
そう、優しいんだ。
本当は自分だって飛んでいきたいはずだ。
他の奴らのようにあわてたりしてもおかしくないはずだ。
それでも冷静でいられたのは、それが表に出ないか出さないか。
たぶん、後者だ。
風祭が倒れた瞬間ちらっと見えた彼女の顔には動揺の色が見て取れた。
それでも、結人や一馬が冷たい等と感じたのは彼女がその動揺を見せなかったからだ。
椎名を行かせたのは西園寺監督の為。
こんな時でも仕事を優先させるのは、只何かしてなきゃ気が紛れない自分と同じ。
そう、彼女は。
「強いんだ──────……」


<渋沢SIDE>
「ごめん、克ちゃん。
大変だって、わかってるけど皆のこと頼んで良いかな?」
そう言った幼馴染みにわかったと短く答えた。
は一度行った以上それを実行する。
だから今、は部屋で仕事をしているはずだ。
けど、がそう言ったの本当の目的は。
本当は、すこしでも皆の不安を取り除くため。
自らが風祭の怪我を心配に思ってない振りをしたんだ。
そんなことなんでもないって。
いつも通りの自分の振りして。
自ら悪役をかってでたんだ。

それに気づけた人間は少ない。
先ほどからこの部屋に集まってくる人数を見れば一目瞭然だ。
来ないのは郭達3人と杉原・小岩の両名と飛葉中の2名と、不破か。
さすがのメンバーといったところか。
藤代は、わかんないって所だろう。
わからないが、を信じたいっていうところだ。
の態度に何かあるというのは気づいているらしい。
さすが、藤代といったところだな。

「だーかーら!ちゃんが風祭のこと心配してないわけ無いじゃん!」
しつこいなーっとふてくされながらいう藤代。
「わかんねーだろ!だいたい風祭が怪我して病院行ってるってのに仕事してんだぜ〜!」
俺にはできねぇよっと鳴海。
「うっ……でも、それには訳があるんだよきっと!」
「どんなわけがあるってんだよ〜」
「……そんなの俺にもわかんねーよ!鳴海のバカー!!」
「なっ、何で俺がバカなんだよ!!」
「バカだからバカっていってんだろ!」
「んだと、コラ!」
ついに胸ぐらをつかみだした両名に俺はため息をはきながら二人の間に入る。
「止めないか、二人とも」
「キャプテン!」
「渋沢!」
「キャプテン、キャプテンはどう思ってるんですか?
ちゃんのこと、冷たいって思ってるんですか!?」
せっぱ詰まったように聞いてくる藤代にふっと笑って口を開いた。
「俺は信じてるよ」
そこで区切って、部屋にいる皆を見渡した。
皆がこちらに注目している。
は人の気持ちに敏感だから─────……」


<功刀SIDE>
「いいえ、しなければならない仕事がありますので」
あの女の言った台詞によって選手達は再び騒がしくなった。
それでも気にせんと、あの女は渋沢になんか言うて宿舎へ入ってた。
その後ろを不破が追う。
周りからは『冷たいよな〜』だの『見損なった』だの言う声が聞こえる。
「カズさん、なしてさんはあんなことば言うたんですかね?」
やっぱり、風祭のこと心配やなかとですか?
捨てられた子犬のように項垂れて昭栄がいう。
お前ほんまにわからんとね?
あの女が風祭のこと心配してないやなんて本気で思っとるんか?
バカやバカや思とったけど、此処までやとは思わんかったばい。

風祭が倒れて運ばれて、あの女が宿舎に入っていくまでずっと、
あの女自分の左手きつく握っとった。
自分かって心配なくせに、無理しよって。
バレバレや。
もちろん気づいてへん奴のが多いっちゃけど。
俺の目はごまかせんばい。
あの女、自分から悪者に名乗り出やがってからに。

「なーなー、監督。
あの東京選抜のマネージャー、風祭のこと心配やないんかなー?」
そう言ったんは、関西選抜の……吉田とか言う奴や。
「ちゃうで、吉田」
「ならなんであんな冷たい言い方するんやろ?
ボクにはわからんわ〜」
「まぁ、お前にはわからんやろな」
関西選抜の監督は、おもしろいといった表情でいった。
「あの嬢ちゃん、強いな」

そうや、自ら悪者かってでるような奴っちゃけど。
けど、あの女。
「あの女は強いんや─────……」

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