出会いと
始
まり
1
入学式からすでに数ヶ月が経過していた。
不安で一杯だった初めの頃とは違い、今では学校にも慣れた。
一番心配だった、友人ができるかどうかという問題も。
隣の席に座ったタレ目の男で解消された。
武蔵野森で、一番にできた友人は三上亮という男だった。
どうやら彼はサッカー部らしい。
サッカー。
どうして、私はこうもサッカーに縁があるのか。
従弟とその友人達に、あの男の子も。
縁がありすぎるのかもしれない。
その所為もあって、サッカーはそれなりに詳しくなった。
しかしあくまでも知識として。
やったことは、実は、ない。
「なぁ、」
お隣の三上んが話しかけてくる。
「何?」
視線を黒板に向けたまま、返事をする。
なぜなら今は授業中。
本来ならば、彼も私の方など見ずに黒板を見ていなければいけないのだ。
「依頼していいか?」
それはキーワードだった。
「で?ご用件をどうぞ」
「……俺と同室のやつなんだが、最近持ち物が良くなくなって困っているらしい」
三上んと同室?
「誰?」
「お前、しらねーのかよ!」
有名だろ!!と三上ん。
「知らん」
私がそういうと、三上んはため息をついた。
「とにかく!たぶんファンの奴らの仕業だと思う」
ファンなんているのか。
やるな、三上んの同室の男。
「それを止めさせればいいのね」
私がそう確認すると、彼はコクンと頷いた。
見た目によらず、友人思いな奴だよね、三上んってば。
「りょーかい」
「報酬は考えとけ」
そういって、三上んは去っていった。
去っていった。
去っていった。
待て。
私はその三上んの同室の男を知らない。
名前すら知らん。
「仕方ない」
そう思って、ポケットから携帯を取り出す。
『何?』
第一声がこの一言なのはいかがなものかと思う。
「桜?だけど」
声の主は、新聞部の桜。
そして、ルームメイト。
情報には事欠かない彼女にはたまにお世話になっている。
もちろんそれ相応の報酬は払わされる。
『そんなことわかってるから、さっさと用件を言え』
「三上んの同室の男の名前知ってる?できればクラスと席も」
『ああ、渋沢ね。もちろんわかるわよ』
渋沢というのね。
「教えてくれる?」
『良いわよ。渋沢克朗、サッカー部1軍でGK。“守護神”だとか言われているらしいわ。
クラスはあんたの隣のC組よ。席は窓際の一番後ろ』
「わかった、ありがとう」
『別に。その代わり渋沢の写真撮ってきて。今度特集組むことになったから』
「りょーかい」
ピッっと、電話を切り再びポケットにつっこんだ。
依頼状況
渋沢克郎の持ち物を盗った犯人ををなんとかせよ。
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