な彼


です、よろしくお願いします」
教壇に立つ教師に促され、名前を述べた。
おきまりの言葉にもかかわらず、教師は私が京都から来たとか
前の学校はここだとか、ひたすら話している。
その間、私は少し目を伏せてそれが終わるのを待つだけ。
、おまえの席は、あー、黒川の隣だ」
話し終えて満足したのか、やっと席に座らせてくれるようだ。
それにしても、教師の声色が困惑しているのは何故だろうか。
ふと、目線を上げれば一人の男の子と目があった。
「あいつが、黒川だ。悪いな、
悪い?
何を言っているのかさっぱりわからない教師を放っておいて
とにかく私は黒川さんの隣に座る。
「はじめまして、黒川さん」
とりあえず挨拶は必要だと思って言葉を発すると、黒川さんは目を見開いて固まった。
ごきげんようのほうが良かったのだろうか?

後々わかったことだけれど(クラスの女子が教えてくれた)、
彼はいわゆる不良と呼ばれるものらしい。
実は初めて見た。
家と学校とお稽古の繰り返しの日々では決してみることがなかった。
しかも、車だったし。
「何、見てんだよ」
思わずじーっと見ていたそうで、彼に怪訝な顔をされた。
「あっ、すみません。クラスの方から黒川さんが不良だと聞いたもので」
「は?」
黒川さんは訳がわからないといった顔をしている。
「あの、不良の方初めて見たもので、つい見てしまって申し訳ございません」
そういって私はあわてて前を向いた。
やはり、じろじろ見られるのは不愉快なのだと思う。
そういえばよく、『見るな』と言われていた。
そのたびに叩かれたりしてた。
「くっ」
隣から聞こえる声に、ふと振り返るとおなかを抱えて笑っていた。
「くくくっ、アンタ、最高、くく」
笑いながら、机をばしばし叩いてる。
「えっと、何かおかしいこと言いました?」
そんな覚えはないんですけど?
でも、黒川さんは笑ってるし。
周りの人は……。
何故か黙ってこっちを見てる。
何でだろう。



END

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