まない再会



信じられなかった。
目を疑った。
数年前、お義父様に連れられて見た彼が、いたから。

バタン……。
スコアブックを落とした音も気にせず、私は驚いた声を出しそうな口を手でふさいだ。
ちゃん?」
不審そうに見てくる監督に気もとめず。
ただ、声にならない言葉を口にしていた。
何で。
どうして。
彼がここにいるの?
ちゃん?」
監督が怪訝そうに顔をのぞき込んでいる。
手には私が落としたスコアブックが持たれている。
今、いったい自分がどんな表情でいるのか、そんなことはどうでも良かった。
それよりも、何よりも確かめなくてはならないことがあった。
「彼の…名前は…?」
何とか絞り出した台詞に監督は、私の目線を追う様に試合中のコートを見た。
「あの…金髪の……」
どうやら私の口はうまく機能してくれないらしい。
たどたどしい私の言葉にも関わらず、監督は彼のつけている番号から名前を割り出してくれた。

「佐藤成樹くんよ」

嗚呼、やっぱり彼なのだと実感した。



落ち着きを何とか戻したい私は、未だにショートしているかのような思考で考えた。
それでも、どんなに考えても、否定しても彼なのだ。
お義父様が探している息子。
そして、私の婚約者。
逃げて欲しかった。
何処までも。
藤村の目が届かないところまで。
いや、まだ大丈夫だ。
ここまで目が届くことがないのは私が実感しているはずだ。
その為に私が此処まで来たはずだ。
落ち着け。
これからどうするべきなのか。
どうしたらよいのか。
最善の道を。
最悪の事態にならないように。
私にできることをしようと。
そう、あの時決めたはずだ。
彼を初めて見たときに。
彼に見惚れたあの瞬間に。


「もしかして、彼が?」
勘の良い監督は気づいたのだろう。
私にそう尋ねた。
私はそれにコクンと一つ頷きを帰すのでいっぱいだった。
正直、どうすればいいか分からないほど私の頭はパンクしそうだった。



END

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