前編



「えっ、風祭先輩が来てたんですか?」
委員会の所為で少し遅れて部活に出てみれば、なんだか騒がしかった。
主に、藤代先輩が。
いつもより、少しだけ機嫌のよい渋沢先輩に聞いてみた。
そしたら、風祭先輩が来ていたんだそうだ。
そして冒頭の台詞に戻る。

「えっ、なんで知ってんの!?」
知ってるも何も、最近まで森にいたでしょうが、藤代先輩。
「当たり前じゃないですか」
「ええー、じゃあ何、俺だけ知らなかったの!?」
いや、たぶん他にもたくさんいると思うけど?
ショックーとか、騒いでる藤代先輩はこの際ほっといて、じーっと渋沢先輩に目線を送った。
「なんだ?」
僕の視線に気づいた渋沢先輩が問うてくる。
「……ずるい」
「は……?」
「僕だって、風祭先輩と勝負したかったのに!」
僕がそういうと、渋沢先輩は困ったように僕の頭をぽんぽんとたたいた。
、一回戦の相手は桜上水だそうだ」
今は、そんなことどーでも良いって……。
ん?桜上水?
桜上水って確か……。
「はっ、こんな事してる場合じゃない!練習しなきゃ!!」
行きますよ、藤代先輩と、未だに騒いでた藤代先輩を引っ張っていった。
後ろで、渋沢先輩がクスリと笑った、気がした。


一回戦が桜上水だと聞いて、いつも以上に練習して
監督にほめられたり、監督にほめられたり、したのにもかかわらず!
僕がでられないなんて!!
なんでさ!
一回戦なんて僕がでる必要ないって言っちゃって。
そのくせ、スタメンでやるくせに。
笠井先輩に聞いたところ、一回戦でスタメンを出すことはまずあり得ないらしい。
なのに、なんで僕がでられないのさ!


試合が始まった。
僕は今日、完全に見学なので、観客席から応援と言うよりは観戦。
一気に2点いれられた。
桜上水はあきらめモードになりつつある。
でも、まだ、まだだよ。
「あー、もうどーにかならねぇのか」
ふと聞こえた、こう、いかにも『おやっさん』と呼びたくなるような人がそういった。
「なるよ」
僕はそういってそこに近づいた。
右にいたおやっさん(勝手に呼んでやれ!)とたばこすってるおじさん。
左にいた、かっこいいお兄さんが僕を見てた。
「どういう事だ、坊主」
僕は坊主じゃないのにー、あーもう、いいよ。
「そのまんまの意味だよ、どうにかなるよ」
どういうことでいっとおやっさんが続けて聞く。
俺はにやりと笑って。
「ただし、風祭先輩がそれに気づければね?」
「あんた、将坊の知り合いかい?」
驚いて見てきたおやっさんに、こくりと頷いた。
何故か、左にいたお兄さんも驚いてた。
「まぁ、話したのは一度だけだけどね」
そういうと、おやっさんの隣にいるおじさんが僕を見ていった。
「いいのかい、そんなことを言って。武蔵野森のルーキーの君が?」
何で知ってんのさ?
ああ、でも僕、森のジャージ着てるから当たり前か。
「誰、アンタ?」
「君は試合に出ないのかい?」
無愛想に言った僕の台詞は、あっさり流された。
むかつく。
「……でないよ。監督が僕はこの試合に出る必要ないってさ」
「やはりスタメンはでても、君はださないか……」
「本当、ふざけるなっての。僕がこの試合のためにどれだけ練習したと思ってんだよ」
「ほう、一回戦のためにそんなに練習したのかい?武蔵野森一軍の君が?」
そう聞いて、驚いたのはお兄さんのほう。
しかも、ちょっと睨まれた。
「それもこれも全部、風祭先輩と戦うためだってのに」
ちぇ、っと拗ねてみたら、いきなり目の前にお兄さんがいた。
「君って良い奴なんだね!あっ、俺、将の兄貴の功っていうんだ。
武蔵野森ってちょっと嫌な印象があったんだけど、俺の思い違いだったみたいだね」
一気に言われてちょっと、ひるんだ。
「あんた、将坊の兄貴だったのかい?」
横からおやっさんが入ってきて、なにやら自己紹介を始めた。
僕は、試合を見ながら聞いていた。



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