後編



風祭先輩や水野さん、佐藤さんの活躍はすごかったが(だって渋沢先輩から2点とった!)
試合は、森に軍配があがった。
最後らへんに、監督の指示で時間稼ぎを始めた森だったが、
ふと、藤代先輩と目があってにこりと笑われたので、にやりと笑い返しておいた。
それを合図に、藤代先輩が一人で勝負しに行った。
うん、渋沢先輩が怪我した風祭先輩をかばって外にボールを出したのと同じくらいかっこよかったと思う。
一番は、風祭先輩だけどね。

こんこん。
一応ノックをしてから入る。
「誰だよ、お前!」
僕のジャージを見て誰か知らないけど、入ってくるなと言わんばかりに睨まれた。
感じわりぃの。
まぁ、もろ『武蔵野森』ってロゴが入ってるジャージじゃ仕方ないかもしれないけど。
「……越前……君?」
確かめるように聞いてくる風祭先輩。
やっぱり覚えててくれたんだ。
ふと、口元がゆるむのが分かった。
「なんや、ポチの知り合いかいな?」
「えっ、うん、越前君は───……」
、だよ?風祭先輩」
そういって、いつもの帽子をかぶる。
「あー、あの時のテニス少年やないか!」
少し叫びがちに、佐藤さんが近づいてきて背中をバシッと叩いた。
痛いんだけど。
「ねぇ、また会えたでしょ?」
まだ状況がつかめていない風祭先輩に、にやりと笑う。


「武蔵野森1年、越前。改めてよろしく」
「越前君は武蔵野森の一軍なんだよ」
僕の自己紹介に、風祭先輩が加える。
部屋に叫び声がこだました。
「今日の試合出てなかったじゃんか」
「ベンチにもいなかったし!」
むかつく。
「本当に1軍なのか?」
むーかーつーくー!
「っていうか、。テニス少年やなかったん?」
違います、佐藤さん。
「ちょっと、皆、本当に彼は一軍なんだから」
僕の機嫌がよろしくないのを悟ったのか、あわててフォローする風祭先輩。
「じゃあ、何で出てなかったんだよ」
またまた言ってきたのは鼻の大きい人。
さっき、風祭先輩が呼んでた所によると『高井』とか言うらしい。
ボール、ぶつけて良い?
「俺ら相手じゃ、出す必要ないって事だろっ」
ぶっきらぼうに言ったのは、水野さん。
機嫌が悪いみたい。
「僕だって、出られるものなら出たかったよ」
本当にね。

「おーい、ー」
そのときふと声をかけられた。
一成だ。
「あっどうも」
上水のメンバーに気づいた一成がぺこりとお辞儀する。
、お前何やってんだよ」
「別に」
「何、お前未だ試合に出られなかったこと拗ねてるわけ?」
「当たり前だろ。僕がこの試合のためにどれだけ練習したと思ってんの?」
いつも以上に、メニューを早くこなして。
終わった後の自主練もいつも以上にして。
いつもならストテニに行ってテニスに当ててる時間を全部サッカーに回した。
「あー、お前人一番練習してたよな。
監督にも褒められてたしな。
でも、でられなかったんだもんな」
嫌いだ、一成なんか!
「一成、先行ってろ」
ギロリと睨むと、一成は分かってるよと去っていった。

「ねぇ、佐藤さんって本当はFWだよね?」
「そやで、何でわかったん?」
「何となく、僕もFWだし」
それから佐藤先輩に近づいて耳元で、佐藤先輩にだけ聞こえる声で言った。
「今度本気で僕と戦ってよ?」
佐藤さんは驚いていたけど、僕はにやりと笑うだけ。
「あっ、風祭先輩」
「えっ、何ですか?」
急に振られたから驚いてる。
何でこの人は敬語なんだろうね。
「かっこよかったよ。渋沢先輩より、藤代先輩より、風祭先輩が一番かっこよかった。
じゃあ、またね」
そういって僕は控え室を出た。


その後廊下にいた功さんに『やっぱり君は良い子だね!!』と思いっきり抱きしめられて
気に入られたのは別の話。

END


 top

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送