ここキスして



違う制服の女子高生を眼で追ってるの、知ってるのよ。
そりゃ、あたしは綺麗とか美人なタイプではないけれどこっち向いて。
いつだって何処にだってあたしと一緒じゃなきゃ厭だなんて、やっぱりあたしの我が侭だよね。

ここでキスして。中編

あれから数日後、あたしはいつもと変わらない生活をしていた。
ただ、屋上で泣いているのを司馬にばれてしまったこと以外は。
「……、また泣いてるの?」
泣いているあたしの横に司馬が座ってきた。
「……んで、今度は何したの?」
あたしは無言のまま、涙をハンカチで拭いて立ちあがった。
「何でもないよ。さあってと部活に行くか。」
「ねぇ……。」
屋上のドアを開けようとしたあたしは司馬の声で動きが止まった。
「……なんでいつも、泣いてる時涙を拭ったりしないの?」
普通は拭うって言いたいんでしょ?
「その方が泣いたって、わかりにくいから……」
それだけ言って私は屋上から出ていった。

部活の休憩時間。
あたし達マナージャーは皆にタオルとドリンクを配る。
「はい、子津くん」
「ありがとうっス。」
「あっ、先輩。私たちにもいただけますか?」
タオルを配っているあたしに声をかけたのは犬飼と辰羅川。
えっとー、辰羅川はタオルを首に巻いてるんじゃないの!?
「とりあえず、辰はいらんだろ……」
あっ犬飼もあたしと同じ意見か。
「ひどいですよ、犬飼くん。私にだってタオルは必要です。」
そういいながら辰羅川は眼鏡をくいっと上げた。
「HAHAHA〜N、凪は相変わらず可愛いNa」
辰羅川にタオルを渡そうとした瞬間に聞こえてきたのは自分の彼氏が自分ではない女の子の名を呼んでる姿。
「辰羅川、あと配っといて」
あたしは残りのタオルを辰羅川に全部渡し、グランドに立ち去ろうとした。
でも、立ち去れなかった。
なぜなら司馬があたしの腕をつかんでいたから。
「離して」
腕を引っ張ってみてもびくともしない。
「……また逃げるの?」
司馬はあたしにしか聞こえないような声で言った。
「……うるさい。」
「ねぇ、もういいかげん別れたら?虎鉄先輩といても傷付くだけでしょ?」
「うるさい、うるさいうるさーい!あたしには大河しか見えないの。大河の長い睫毛もあの華奢で大きな手も全部大好きなの。何処にだって大河程のひとなんて居ないの。だからほっといてよ。」
あたしはいつの間にか大きな声で言ってしまったらしく部員の皆から注目されていた。
因みに大河はテレ気味でふにゃふにゃしてる。
「……すごい口説き文句なのだ。」
鹿目先輩がぼそりと言った。
「……っつ……。」
は、恥ずかしすぎっ。
あまりの恥ずかしさに下を向いてしまった。
「……あのYOー、。」
テレた大河がバンダナを押さえながらこっちへ向かってきた。
あたしは司馬に捕まれた腕を無理矢理はずし、グランドから逃げ去った。

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